解雇には一般的な普通解雇の他に懲戒解雇があり、懲戒の文字通り制裁的な性質を持っている違いがあります。
社内の秩序を乱すような状況において、労働者に対し大きなペナルティを課さざるを得ない場合に選択されます。
当然ながら労働者は職を失い収入源が1つなくなるので、手痛いペナルティなのは容易に想像できます。
ただ失業保険自体は受け取れますから、急に収入源が途絶えて即生活に困窮することはないです。

懲戒免職と懲戒解雇と諭旨解雇の違い

ちなみに、失業保険が有効な理由は再就職までの一定期間の生活を保障する趣旨にあります。
一方、退職金は支払われないケースが多いですから、長年勤めていた会社から解雇となればかなりの痛手です。
似た言葉に懲戒免職がありますが、こちらは公務員に用いられるもので、仕事を失う重いペナルティの意味では同じです。
懲戒解雇は企業が行うあらゆる懲戒処分の中でも、最も重いものに位置づけられています。
最も軽い戒告や譴責を始めとして、減給や出勤停止、降格と段階的に処分は重くなっていきますが、諭旨解雇や諭旨退職を上回ります。
諭旨解雇は懲戒解雇に相当する処分ですが、酌量の余地がある場合に処分を軽減した解雇なので、この位置づけは当然といえば当然です。
その為、懲戒は余程のことがなければ行われませんし、諭旨解雇が言い渡されることすら稀です。
イメージ的には労働者の会社からの追放ですから、相当な背信行為がないとここまでの処分にはならないです。
例えば地位を悪用して犯罪に手を染めたり、会社の信用を著しく下げるような行為が懲戒に相当します。
あるいは経歴の詐称で信頼関係を揺るがすほどの嘘であったり、長期にわたる正当な理由のない無断欠勤もあてはまります。

懲戒解雇が言い渡されるケース

近年は様々なハラスメントが問題になるケースが増えていて、見逃せないパワハラやセクハラがあれば普通解雇では済まなくなっています。
しかし、1度や2度のハラスメントで懲戒解雇になることはまずありませんし、パワハラ1つでも骨折や入院を要する怪我でなければ、一発退場ということはないでしょう。
セクハラも同様に、相手が嫌がる言葉を掛けたりボディタッチする程度なら、解雇の可能性は上がるにしても懲戒はないと思われます。
比較的軽い懲戒処分が行われたとして、何度も懲りずに同じような行為を繰り返す場合は、流石に会社も看過できなくなります。
通常は段階的に処分が重くなっていくので、大抵は途中で事の重大さに気がついて行為を止めたり反省を見せるものです。
ところが、稀に懲戒処分を痛くも痒くも感じなかったり、むしろ面白がってエスカレートするケースが生じます。
会社は懲戒のレベルを引き上げて処分を下しますが、出勤停止や降格となっても反省の色が見られなければ、懲戒解雇を検討せざるを得なくなります。

会社の堪忍袋の緒が切れた時点で退場

勿論、ハラスメントに酌量の余地はありませんから、会社の堪忍袋の緒が切れた時点で退場となるわけです。
明らかな犯罪行為でない限り、会社は労働者に何度も注意や警告を発しますから、それを無視して会社に迷惑を掛け続ければ解雇されても仕方がないです。
ただし、会社が辞めさせたい労働者に濡れ衣を着せたり、過大に罪を重く見せて懲戒解雇に追い込むケースもあります。
こういうケースは不当解雇の可能性がありますから、明らかに解雇はやり過ぎと感じたら異議を申し立てることができます。
作成した異議申立書をハローワークに持ち込み、離職票と一緒に提出することで異議申し立てとなります。
会社側も不当解雇と疑われない為に、就業規則を策定してルールを設けたり解雇の判断基準にしています。
それから理由があっても即解雇できるわけではなく、手順を踏んで手続きをしなければ、解雇そのものが無効になることもあります。
懲戒はペナルティなので処分は重いのが普通ですし、間違いがあると困るので、労働者には弁明する機会が与えられるのが普通です。

重大な犯罪や背信行為がなければ即解雇はあり得ない

また、合理的理由や社会的相当性がない場合も解雇は無効になりますから、重大な犯罪や背信行為がなければ即解雇はあり得ないわけです。
企業は組織なので、使用者が独断で労働者を辞めさせることはできず、まずは問題行為の内容の調査を行います。
問題が事実だと分かった時点で解雇の理由に相当するか検討に入り、就業規則と照らし合わせて弁明の機会となります。
その後、解雇に関する通知書が作成され、従業員にその旨が伝えられて職場で解雇が発表される流れです。
失業保険の手続きや離職票の手続きもありますが、解雇の理由が懲戒だとしても、手続きの流れは普通解雇に近いです。
退職金が支払われるかどうかは、退職金規定にもよります。
そもそも退職金に関する法律の定めはありませんから、退職金を支給するかどうかは会社の判断次第です。
支払われていない給与があれば支払われますし、支払われるべき手当があるなら、ペナルティを受けた労働者であっても受け取れます。

まとめ

実は、逮捕されるような犯罪行為でも即解雇はまずあり得ませんし、やはり手順通りに段階を踏んで手続きが行われるので、処分に感情を挟む余地はなく理性的だといえます。

最終更新日 2025年8月6日